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「纏う」から「想う」まで。進展する推し活の実態をつかんでビジネスに!

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■とどまることを知らない推し文化

近年、“推し”文化の勢いはとどまることを知りません。芥川賞受賞作品である『推し、燃ゆ』やアニメ化も話題となった『推しの子』など、推しを題材にした作品が大ヒットとなり、社会に浸透していることは明らかです。株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが運営するSHIBUYA109 lab.が15~24歳のZ世代を対象に行った「Z世代のヲタ活に関する意識調査」によると、「推しがいる」もしくは「ヲタ活をしている」と回答したのは全体の82.1%にも及ぶそうです (※1) 。 アイドルや俳優、お笑い芸人、宝塚スター、声優や漫画・アニメ・ゲームのキャラクターからYouTuber、VTuber、動物や建造物まで…実際に私も友人からさまざまな推したちの話を耳にします。そんな推しがいる人々の活力となっているのが、2021年の流行語大賞にもノミネートされた“推し活”。活動の内容は多岐に渡り、その幅はどんどん広がってきています。

■さまざまな推し活のかたち

推し活の代表的なものとしては、

  • ライブや公演、握手会、イベントに参加する、ファンクラブに加入する
  • CDやDVD、写真集、その他関連グッズを購入する

といった活動が挙げられるかと思います。しかし、近年の推し活はこうした従来の活動だけにとどまらず、多様化し続けています。以下でいくつか事例を紹介します。

「纏う」推し活

ファッションで推し活を楽しむ方法もあります。以下は、前述のSHIBUYA109 lab.による調査のうち、「ヲタ活時のファッションについて、あなたにあてはまるもの」についてのアンケート結果です(※2)。

「Z世代のヲタ活に関する意識調査」ファッション 図 画像 Q.ヲタ活時のファッションについて、あなたにあてはまるものは? A.普段のファッションに一部ヲタ要素を取り入れる42.1%、普段とヲタ活でしたいファッションが同じなので普段と変えない15.6%、普段とヲタ活ではファッションは全く違う14.4%、特に気にしない27.9%

「普段のファッションに一部ヲタ要素を取り入れる」という意見が半数近くなっています。また、同調査での「ヲタ活時のファッションの選び方として、あなたがやったことがあること」についてのアンケート結果では「推しのカラーを取り入れる」「推しの雰囲気に合わせる」といった回答が上位になっています。

推し活とは言っても普段と大きく異なるほど主張の強いファッションではなく、部分的に推しの要素を取り入れるのが主流になっているようです。最近はアパレルブランドやコスメブランドによるアイドルやキャラクター、漫画・アニメ作品などとのコラボ商品も増えていますが、主張しすぎず日常的に利用しやすいデザインのものがよく見られます。「纏う」推し活については、誰からも一目で推し活と認識されるほど主張したいわけではなく、「自身の日常生活に推しの要素を取り入れ楽しみたい」「友人や家族などの身内や、同様の推しがいる人にだけ伝わればいい」と考えている人が多いのではないでしょうか。

「共有する」推し活

一人での活動ではなく、共通の推しがいる仲間同士での推し活も見られます。カラオケボックスやレンタルスペースを利用した推し関連映像の上映会、推しカラーの飾りつけやケーキなどを用意して推しの誕生日を祝う本人不在の誕生日会などが挙げられます。また、SNS上での情報共有が主流となっており、推しについての話題や推し活の様子など、推し関連の情報が盛んにやりとりされています。Instagramなどの画像・動画共有型のSNSでは、イベント会場のフォトスポットや近年勢いのあるコラボカフェでの写真、手作りのオリジナルグッズや推しのぬいぐるみ、アクリルスタンドが映り込んだ写真など、ありとあらゆる推し活写真の投稿も見られます。

「想う」推し活

具体的な活動ではなく、推しのことを「想う」行為でさえ推し活に含まれるのだと言います。バイドゥ株式会社が提供するキーボードアプリSimejiがZ世代ユーザーを対象に調査した「推し活の方法TOP10」では、5位に「もはや存在していることに感謝」、7位に「ひとり静かに推しを想う」という回答がランクインしています (※4) 。この結果について、Z世代には小中高生も含まれるためグッズ購入やライブ参加などの活動に使える金額が少ないという理由もあるかもしれませんが、それ以上に、推しや推し活の存在がZ世代の生活にいかに馴染んでいるかということを表しているのではないでしょうか。 近年の推し活の多様化には、社会的影響力の高いZ世代の特徴が関係しているように思います。多様性や個性を尊重するZ世代にとって、推しの要素を自身のファッションや生活に取り入れたり、装飾やグッズにこだわった推し活写真を作成したりといった活動は、ある種の自分らしさの形成・表現になっているのかもしれません。SNSでの情報共有型の推し活に関しても、 デジタルネイティブであるZ世代によってここまで活発化してきたと言えるでしょう。

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推し活の言葉 イメージイラスト

■推し活のもたらすメリットとは

推し活の多様化について述べましたが、その様々な側面へもたらすメリットも注目すべきポイントです。例えば、「精神面へのメリット」です。以下は、パナソニック株式会社が行った20~50代の女性を対象とした「推し活」に関する調査の中で、「推し活による気持ちや生活の変化」についての結果です(※4)。

『20~50代女性「推し活」に関する調査』図 画像 Q.「推し活」を通じて得たものは? A.楽しみ76.2%、活力・元気63.8%、幸せ63.0%、ストレス解消・発散法62.4%、癒し60.4%、モチベーション60.4%、ときめき58.6%、高揚感58.6%、人生の豊かさ・うるおい54.4%、感動50.0% 出典:パナソニック株式会社『20~50代女性「推し活」に関する調査』(2022年発表)

※4 出典:パナソニック株式会社『20~50代女性「推し活」に関する調査』(2022年発表)

「推し活を通して得たもの」についてのアンケートでは、上位は全て前向きな内容になっています。また、「『推し活』を通じて、人生が変わったと思いますか?」という質問については、92.2%が「思う」と回答したそうです。回答者のコメントの中には、「推し活をはじめてから、気分が明るくなって毎日が楽しくなった」「ライブやファンとの交流により友人が増え、たくさんの考え方を学び、昔に比べて内面が豊かになったように感じる」といった、気持ちや生活に良い変化が生じたと分かる内容のものが多く見られました。

家庭や学校、勤務先の問題など、誰もが様々なストレス要因を抱えて現代社会を生きています。特にコロナ禍では、それまでの生活が一変し、よりどころにしていた趣味やストレス解消法を奪われ、気持ちが落ち込んでしまう人も多かったと思います。そんな状況下でもあらゆる方法で楽しむことのできる推し活は、生活に楽しみを見出し、活力やモチベーションを取り戻すのに適していると言えるでしょう。

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そして、「経済面へのメリット」もかなり大きいと考えられます。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2021年度の市場規模は6,840億円にも上ると言われています(※5)。CDやDVD、書籍、フィギュアなどのグッズやライブ・イベント費用などはもちろん、近年はその他にも推し活に関連した商品や企画でヒットとなる事例が数多く見受けられます。

例えば、推しのカラーを纏う推し活に関連して、ルームウェアブランドの「gelato pique(ジェラートピケ)」が発売した全12色のトートバッグと全10色のポーチが話題となりました。通学や通勤時にも使いやすそうなシンプルなデザインですが、カラーバリエーションが豊富で推しのメンバーカラーを選びやすくなっています。その他のブランドでも、豊富なカラー展開のグッズを見かけることが増えました。

また、飲食店や食品とキャラクターとのコラボ企画も人気が高く、その規模は急激に拡大しています。特に有名キャラクターやアニメ・漫画作品、映画作品などのコラボカフェは、その世界観を詰め込んだ内装やコラボメニュー、特典グッズなどの効果で集客力がかなり大きくなっています。私も実際に、「ムーミンカフェ」へ足を運んだことがありますが、店内には登場キャラクターが座っている席があったり、グッズや原作絵本の挿絵が飾られていたりして、メニューもキャラクターをモチーフにした可愛らしいものばかりで存分に世界観を満喫出来ました。

■推しとの共感を武器に!推し活マーケティングでブランドの成功を導くために

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推し活による経済効果は、これから先もあらゆる企業にとって成功のカギとなり得るものと言えるでしょう。とはいえ、付け焼き刃で立てた企画では企業にとっても顧客にとってもメリットにはなりません。先に述べた通り、推しの存在は彼らにとって生活や内面を豊かにする大切なものです。そのためには、企業がまず行うべきは、取り上げる人物やグループ、作品やキャラクターなどの背景を深く理解し、その魅力を最大限に引き出す工夫です。特に、推し活を盛り上げているZ世代をターゲットにする場合は、日常生活に取り入れやすいデザインやSNSで共有したくなるような要素に注意することが重要です。

「推し活」に関連したものだけでなく、顧客のニーズに適したマーケティングを行うためには、時代背景やターゲットの特徴について調査し、的確に捉える必要があります。もし朝日広告社がお手伝いできることがあれば、お気軽にご相談ください。


※1 出典:株式会社N.D.Promotion「Z世代のヲタ活に関する意識調査」(2022年発表)
  調査で使用されている「オタ活」という言葉は「推し活」とほぼ同義。

※2 (※1) に同じ。

※3 出典:株式会社N.D.Promotion『【Simejiランキング】Z世代が選ぶ!!「推し活の方法TOP10」』(2023年発表)

※5 出典:株式会社矢野経済研究所『「オタク」に関する消費者アンケート調査を実施』(2022年発表)

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TEXT BY コミュニケーションデザイン本部 S

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